イギリス発、十人十色の働き方


ボッティング大田 朋子(Tomoko Botting-Ota

本コラムでは、働く女性にインタビューして仕事・起業のこと、ライフワークバランスのとりかた、リラックス法、時短の工夫といったお話をうかがいます。

 

第2回目は、20年以上前にスペインへ移住しスペイン産のワインや食材、食器などを日本に輸出するビジネスを展開されている片岡さんに登場していただきます。

 

現在されているお仕事のことを教えて下さい。


現在、スペイン産のワインや食材、食器などを日本に輸出するビジネスを展開しています。信頼できる生産者と、彼らの商品の良さを理解し大切に販売してくださる日本の方々を繋いでいます。ビジネスの規模に限らず、日本でスペインの本物を求められる方々がいれば、喜んでお手伝いさせていただいています。

わたしは昔も今も食と人に対する興味が尽きないんです。仕事柄スペインの小さな村の試飲会や物産展に出向くこともよくありますが、「畑に見学においで!うちの親父に会ってほしい!」なんてポッとなるような言葉でお誘いしてくれる生産者に出会うことも。生産数が少なく十分な供給ができず迷惑がかかるかもしれないという理由で最初から取引を断ってくる生真面目な生産者さんもいるんですよ。素朴な彼らが手がける、本当の意味で安心できる食べ物を日本に紹介できたらというのが仕事を始めたきっかけです。

今後は、単に“輸出”という観点からだけでなく、バレンシアを拠点に食文化そのものを紹介していけるような執筆業や、観光用に作り置きされたプランではなく、現地の食文化をたっぷりと感じていただけるような一味違ったグルメ・ツーリズム業にも発展させていければと考えています。

そもそもどうしてスペインに移住することになったのですか?

日本でごく普通の会社員として働いていたのですが、学生時代から続けていたスペイン語から飛び火してスペイン料理に惹かれたことがきっかけです。思い立って24歳に退職、1年の期限付きでスペインに来て国内全域を食べ歩きましたよ!期限切れ寸前に現在の夫と知り合って、紆余曲折を経てその2年後にスペインへ戻って結婚。そのまま現在進行中です。

最近、日本で生まれ育った年数と、スペインで暮らす年数が同じになりました。学生の頃と今とでは環境も違いますが、両国を内と外から客観的に見られるようになりました。仕事の上でも両国の仕事の進め方も理解できるようになり、精神的にもイライラすることが少なくなってきましたよ。

お子さんが3人おられると聞きましたが?!

 

我が家の子どもたちは3人ともやっとビールの飲めるお年頃になりました。とはいえ完全に手がかからなくなったとはいえなくて。交通網が未発達な環境での生活ですので、今だに送り迎えにかり出されることも!無料専属タクシー業はまだ続いています!(笑)

 

お子さんが小さいときはお仕事、育児、家事などはどのようにバランスをとられていたのでしょうか?その時にされていた工夫や時短法などがあれば知りたいです。

わたしが育児を始めた20年前ごろのスペインでは仕事を持つ親に対する配慮がまったく施されていませんでした。有名な話ですが、スペインではお昼にランチ休憩で一時帰宅しますよね。わたしの場合だと、朝9時に子どもたちを学校に連れて行き、昼1時にピックアップ。自宅で嵐のように昼食を済ませたら、午後3時にまた学校へ送って行きます。お迎え時間はあっという間の2時間後というスケジュールでした。子どもたちの年齢によって、保育所と小学校を何往復もする時期もありましたし、送り迎えだけでも大変でした。

そういう生活だったので、子どもが小さい時期は、取材を必要とする執筆業や拘束時間の長い通訳業は休業をせざるをえなくなったんです。それでも完全に社会から離れてしまわないように、夫が経営する会社の営業事務などを手伝って仕事は続けていました。ビジュアル系やドロー系のソフト、CADを学んだのもこの頃です。こちらの仕事も現在も続けており、ホームページも私が手がけました。

家事は手を抜けるところはとことん手を抜く、という「ええ加減(良い加減)」さが今思えばよかった気がしますね。仕事も育児も家事も基本はしっかりするけれど、できる範囲で適当に転がせばいいと楽天的に考えていて、それが家族みんな笑って過ごせてきた秘訣だと思います。「仕事のために必死に生きる」のではなく、「幸せに生きるために仕事をする」姿勢を語ってくれたスペイン人がいます。素敵な考え方です。

片岡さんはすでにお子さんがある程度大きくなられていますが、今から振り返ってやってみてこれはやってきてよかったということがあれば、知りたいです。

「一日一食は必ず家族そろって食事」というのは、今も昔も変わらないわが家の日課です。ゆっくりできる食事となるとどうしても夕食になり、食習慣的に夕食が遅いスペインなので、「健康のために子供は9時に就寝すべき」と聞くたびに耳の痛い想いをしたものですが…。でも、夕食が私たち家族にとって最も大切な時間だったと思います。毎日の出来事や失敗談、先生の話、世間のオキテなど、いろんな観点から話す機会を食べながら共有することで、人として大切なものを学んでくれたと信じています。

現在育児と仕事真っ最中のママたちにアドバイスがあればお願いします。

育児にはマニュアルはないし、こんなに重要で難しい仕事なんて世の中にないと思うんです。育てているのは子どもだけじゃなくて、結局自分だったりするんですよね。お金では買えない大きな物を手にできるのが育児だと思っています。
それぞれの環境で出来る限りの愛情を注いでくださいね、というのがアドバイスです。

ワークライフバランスをとるために意識されていることがあれば教えて下さい。

 

「大切な物は何か」を常に忘れないようにしています。育児に手間がかかって仕事をする時間がない。仕事に没頭したいのに育児や家事があるから出来ない。「両立出来ないなんて要領の悪い!」と自分を攻めることもありますが…。でも悩んでいる自分も、不完全燃焼の自分も、もっと先に進みたい自分も全部受け止めたい、と思っています。

 

八方塞になってしまったら、まず立ち止まる、そして深呼吸。今手の中にあるものの価値をしっかりと知ることができると、別の方向に扉があることに気づいたりするんですよね。

 

私ってすごく不細工で生き方が下手だって思うんです。色々な経験を積んで色々な分野で仕事をしてきて、これだけいろんな事ができるのに確固たる社会的地位があるわけではない副業専門家です。でも、その分、家族に恵まれているなって思います。スペイン語では、「半分のオレンジ」という意味の「メディア ナランハ(media naranja)」は、人生の相棒、片割れを差すんです。自分ともう半分のオレンジを合わせたらぴったりと一つになる、という意味で。オレンジで有名なバレンシア州にいるからこの表現を使うわけではないですが、夫とはまさにそんな感じです。実際には欠点だらけですが唯一無二のオレンジです。

 

一番上の子を妊娠した当時は、そのままキャリアを積めばかなり上までいける状態だったので、子どものいる人生か、仕事に燃える人生か選べって言われたような気がして悩みました。でも、わたし子どもは無理って言われたのに3人も授かったんです。しっかり育てないとバチが当たる、と思いました。

 

その時々で大切に思うものに向き合ってきたことが、仕事でも家族でも幸せな今の自分につながっていると思います。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

片岡さんは大切なことは気負わずともしっかり押さえて、それ以外のことは「ええ加減」で、といった肩肘はらない姿が非常に印象的でした。片岡さんも旦那さんもとても自然体で、とにかくよく笑う!子育てにしてもお仕事でも、片岡さんの笑顔に惹かれて福が集まってきたんだろうなあって思いました。



【片岡さんのお仕事サイト
・スペイン食のスペシャリスト『オルカ・スペイン』

   https://www.orkaspain.com/


・スペイン情報誌『Acueductoアクエドゥクト』コラム掲載“スペイン味うぉっちんぐ”   

   https://acueducto.jp/gastronomia/ajiwatching/


Sabor al Sol Spain インスタグラム

     https://www.instagram.com/sabor_al_sol_spain/?hl=ja

 


ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota

ライター&プロジェクトプロデューサー

 

アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。

現在イギリス・カンタベリー在住。

メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。

アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。

 ⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/

 

ブログ https://tomokoota.wordpress.com/